日本一の物産展誕生秘話

日本一の物産展誕生秘話

~カリスマバイヤーと八海山~

内田勝規
(東武百貨店池袋店 販売推進部 催事企画担当エグゼクティブバイヤー)

      

(『致知』2010年4月号 特集「繁栄発展の法則」より)

(「内田さんのその活力はどこからわいてくるのでしょうか」の質問に)

この仕事を一番初めにやった時に出会った、
八海(はっかい)醸造の南雲(なぐも)和雄会長の
影響が大きいですね。

バイヤーに就任した当時、規模縮小を図っていた
物産展でしたが、目前に新潟展を控えていて、
僕はやるからにはいままでとは違うことをやりたい、
目玉商品を作るぞと粋がっていました。

そこで目をつけたのが、当時幻の銘酒といわれていた
八海醸造の「八海山(はっかいさん)」です。

僕はこのお酒を何とか出品してもらおうと、
会社について詳しく調査をしたんですね。

すると昔、業績が悪化し、金融関係から
悉くそっぽを向かれた時期のあることが分かりました。

僕はこの時、誰が支援したのかを調べ、
遂にその人物を突き止めました。

そして彼に「こういうことをやりたい」と言ったら
一緒に新潟まで付いてきてくれたんです。

南雲さんに会うと「あんたらの希望は何だ」と聞くから、
僕は「八海山を三千本出してください」と言いました。

これには向こうも一瞬息を呑んだんですが、
分かったと約束してくれたんですよ。

ところが帰り際に

「内田さん、今度一人で来い」

と南雲さんに耳打ちされたので、その後、
一人で行きましたらね。

机をバーンッ!! と叩かれて

「汚い手を使いやがって!
 おまえは許せない。きょうは一日拘束だ」

と言われたんです。その後、

「ところでおまえ、酒飲めるのか」

と聞かれたんですが、僕、まるで飲めないんですよ(笑)。

で、お酒を注いでくれたんですが、
もう頭痛くてわんわんしてて、
嫌だなぁと思っていたら、
向こうのほうで奥さんが泣いてるんですよ。

なんで泣いてるのかな、と思いながら
南雲さんのほうをふっと見たら、
その顔色が、真っ黒だったことに気づいたんです。

肝臓がんだったんですよ。

でも南雲さんはその肝臓がんをおして、
僕と一晩中飲んでくれて、
酒づくりに懸けてきた思いを
一所懸命語り続けてくれたんですね。

僕は胸が痛んでしょうがなかったけれど、
会社に帰ってきて社員から

「新潟展のポスター、どうします?」

と聞かれた時に、八海山の一升瓶一本で、
ポスターを作ったんですよ。

「これぞ、新潟展」というコピーをつけて。

そのポスターが出来上がって
南雲さんの所に持って行ったら、
もう南雲さん、泣き出して、

「母ちゃん、母ちゃん!
 内田が冥途の土産を持って来たぞ」

と言って喜んでくれたんですね。

その晩もやっぱり泊まらされて、
茄子を出してくれたんですが、
これがいままで食ったことがないくらい、
うまい茄子だったんです。

南雲さんは

「新潟の茄子の生産量は全国2位だが、出荷量は7位だ」

と教えてくれたんですが、なぜ出荷量が低いのか?

不思議に思って尋ねてみたら、

「いい物は地元の奴が食うに決まってるだろう」

と言われたんですね。

あぁ、そうか。なるほどそうかと。
それから僕は、自分で探して歩こうと思ったんですよ。

それで新潟展が無事成功して、
お礼を言わなきゃなと思っていた矢先に、
南雲さん、亡くなってしまったんですね。

お葬式に行ったら、
駅に凄まじい人だかりができていて、
結局、お焼香もできず終い。

遠くから手を合わせて帰ったんですが、
気持ちはモヤモヤしたままでした。

それで何か月か経って、
もう一回お線香だけ上げに行こうと思って、
行ったんですよ。

そしたら奥さんが覚えててくれて、

「さぁ上がってって」

と言うから、部屋に入らせてもらいました。
すると、仏壇の横に

「これぞ、新潟展」

のポスターが張ってあったんです。

その時にね、この時にね、
僕がこれから物産展をやっていくのに、
いろんなことを教えてくれたな、と思って。

僕が何でそこまで取引先のために、
銀行の面倒を見たりするんだ、と思われるかもしれませんが、
作り手の気持ち、ちゃんと理解しながら
物を紹介していかなかったら、
お客さんに伝わるわけねぇだろう、って。

だから自分でもたまに楽をしようと
思う時があるじゃないですか。

そんな時は、これやると
南雲さんにまた怒られるような気がするし、
絶対に中途半端なことはできないぞって思うんです。
それが南雲さんに教えられたデカいことですね。

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「人間力.com」は月刊誌『致知』より引用しています。

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