君はそれ、自分で確かめたんか?

君はそれ、自分で確かめたんか?

佐久間昇二(WOWOW相談役)

        

(『致知』2011年6月号 「20代をどう生きるか」より)

私が松下幸之助という偉大な師とお会いしたのは、
二十八歳の時でした。
組合活動をしながら、大阪本社の企画本部調査部で
仕事をしていた頃です。

ある時、幸之助さんが新聞広告に出ていた
某ミシン会社の貸借対照表を見て、
現金を非常に多く保有していることに驚かれ、
その理由を調べるようにと指示がありました。

調査をしたところ、その会社では、
消費者が購入したいミシンを積み立てで販売する
「予約販売制度」を取っていたことが分かりました。

私はその報告書を上司に渡して
用件を済ませたつもりでいましたが、
幸之助さんは私に直接説明に来るように言われました。

当時、会長だった幸之助さんは、
松下正治社長と高橋荒太郎副社長とで、
重要事項を決済する三役会議を開いておられました。

まだ入社四年目だった私が恐る恐る部屋に入ってみると、
幸之助さんが非常に話しやすい雰囲気を
湛えておられることにまず驚きました。

幸之助さんはその予約制度を
松下でもやりたいと考えておられましたが、
私は一通りの報告をした後で

「やるべきではありません」

と結論を述べました。

幸之助さんはじっと話を聞いておられましたが

「君はそれ、自分で確かめたんか?」

と言われました。
つまり、調査会社にやらせたのではなく、
自分の目と耳と足で確かめたのかと。

私が
「全部自分で確認しております」
と答えたところ、

「そうか、それは結構や。
 ところで君、そのミシン会社は一流やろ。
 その一流会社がやってることを、
 うちがやったらなぜあかんのや」

とおっしゃいました。私は

「一流会社がやっているからいいと言うのではありません。
 この制度を採用することが一流会社として
 本当にふさわしいものかどうかで判断してください」

と述べました。すると幸之助さんは

「よし、分かった。やめとこう」

と即断されたのです。

驚いたのはこちらです。
普通なら「後は我々で預かるから」と
いうふうになるものでしょう。

幸之助さんがそうでなかったのは、
実際に現場を見てきた者に対する信頼と、
もう一つは経営者としての「勘」ではないかと思います。

その予約制度は顧客との契約を巡るトラブルが多く、
新聞沙汰になっていたことがよくありました。

松下としては消費者に対して
少しでもご迷惑を掛けるようなことはやるべきではないし、
ミシンの普及が進んで価格が下がれば
その制度自体が成り立たなくなる。

長い目で見れば決してよい制度ではないということを感じられ、
さっと決断を下されたのでしょう。

その時につくづく感じたのは、
私が自分で現場を歩き、自分で確かめて結論を出したのが、
信用を得る根拠になったということです。

現場には宝物が落ちているといわれますが、
絶えず現場を確かめることの大切さをこの時、
身を持って知りました。

また当時から私の根本にあったのは、
社長や上司を間違わせたくない、
会社として正しい判断をしていただきたいという思いでした。

自分が提言することは会社にとって正しい、
と自信を持って言えるかどうか。
そうでなければ本当の意味で
仕事をしているとは言えないでしょう。

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「人間力.com」は月刊誌『致知』より引用しています。

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