極限を通して見えてきたもの
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極限を通して見えてきたもの
   ~限界を超えた瞬間~

《対談》塩沼亮潤(慈眼寺住職)+栗城史多(登山家)

      

『致知』2013年4月号「渾身満力」より

     修験道の中で最も過酷な行の一つとされる千日回峰行に挑み、
     9年の歳月を経て見事満行を果たした塩沼亮潤氏。
     25歳の時から死の地帯といわれる8000m峰に酸素ボンベを
     持たず1人挑み続ける栗城史多氏。

     ともに自ら茨らの道を行き、人間の限界を超えてきたお2人に極限の
     世界を通して見えてきた人生の心理について語っていただいた。

【栗城】
塩沼先生も千日回峰行をされる中で、
やはり命の危険を感じられたことはありますか。

【塩沼】
私の場合、1年のうち4か月、1日48km、高低差2000mぐらいを
毎日歩いていくのですが、だいたい最初の1か月で爪がボロボロに
なってきて、3か月目くらいに血尿が出てきます。
最後の1か月は呼吸とリズムだけで、この体を山に持っていって、
下ろしてくるという感じなんです。
ある時、40度の高熱が出て、お腹をこわしてしまい、どんな薬を
飲んでもすぐに下してしまって、10日間で11kgも痩せてしまったんです。

【栗城】
それは何日目ぐらいの時ですか?

【塩沼】
488日目から始まって、494日目には何も食べないで48km、
16時間歩き続けました。
それでも帰ってきたらお師匠さんに何食わぬ顔で
「きょうも無事行ってまいりました」とご報告します。
お師匠さんから「体調どうや」と聞かれても「ボチボチです」と。
そこで体調が悪いです、と言うと心配させるので、本当はそこで
のたうち回りたいぐらい苦しいんですけど、ポーカーフェイスで
気丈に振る舞う。

それで、着替えをする部屋に帰ってきた時に、もう全身震えが
止まらなくて涙が出てきてね。
自分で自分の体に謝っているんです。「俺がこんな行するなんて
言うから、体に負担かけてごめんね、ごめんね」って。這うようにして
次の日の用意を済ませて休みました。

そしたら、次の日は1時間も寝坊です。しかし、1000日のうちたった
1日でも休んだりしたら、その時点で行は失敗。
所持している短刀で腹を切るか、腰に結わえてある死出紐で首を吊るか、
2つに1つの厳しい掟がありました。

【栗城】
まさに命懸けですね。

【塩沼】
ですから、高熱で体が動かないという極限の状態でも、いつもと
同じことを同じようにしなければなりません。
その日はもう何も持たないで行きましたね。杖も提灯も持たない。
それで躓いて、体が地面に叩きつけられた時に、ふうっと体が
宙に浮くような感じになって、まるで真綿に包まれたような感覚に
なったんです。

あっもうこれ以上前に行けないかもしれないなって冷静な判断を
している自分がいて、腹を切ることに対する怖さもない。
でもその時に、走馬灯のように小さい頃からの記憶が甦ってきて、
ちょっと待てよと。いままで母子家庭の中、母ちゃんやばあちゃん、
近所の人も皆、応援してくれたのに、これしきのことで倒れるわけに
いかないって体の芯から溢れんばかりの猛烈な情熱が出てきたんです。
前の日は何も食べていない。その時点で2時間遅れている。
そんな中、ウォーと叫びながら突っ走っているんですよ。
走って、走って、走っているんですね。それで24km先、標高1719mに
到着して時計を見ると、いつもと同じ8時半。

【栗城】
いやぁ、凄い。まさに渾身満力ですね。

【塩沼】
その時どういう状況だったか。
8月で摂氏22,3度の気温だったんですけど、足の先から指の先まで、
ボォーって湯気が出ていたんですよ。この時にバーンと限界を押し上げたのか、
そこから体調がよくなっていきました。

プロフィール……………………………………………………………………………………………………
塩沼亮潤(しおぬま・りょうじゅん) 
昭和43年宮城県生まれ。61年東北高校卒業。62年吉野山金峯山寺で出家得度。
平成3年大峯百日回峰行満行。11年吉野・金峯山寺1300年の歴史で2人目となる
大峯千日回峰行満行を果たす。12年四無行満行。18年八千枚大護摩供満行。
現在、仙台市秋保・慈眼寺住職。大峯千日回峰行大行満大阿闍梨。
著書に『人生生涯小僧のこころ』『人生の歩き方』(ともに致知出版社)などがある。

栗城史多(くりき・のぶかず)
昭和57年北海道生まれ。大学の山岳部へ入門した2年後の平成16年北米最高峰
マッキンリー(6194m)の単独登頂に成功。19年世界第6位チョ・オユー(8201m)
を単独・無酸素登頂し、動画配信による「冒険の共有」を行う。
20年世界第8位マナスル(8163m)単独・無酸素登頂。21年世界第位ダウラギリ
(8167m)単独・無酸素登頂、インターネット生中継に成功。
現在、世界最高峰エベレスト(8848m)の秋季単独・無酸素登頂を目指す。
著書に『NO LIMIT』(サンクチュアリ出版)『一歩を越える勇気』(サンマーク出版)がある。

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「人間力.com」は月刊誌『致知』より引用しています。

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