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シェイクスピアはなぜ人を魅了するのか

小田島雄志(東京大学名誉教授)

      

『致知』2015年10月号 特集「先哲遺訓」

『ハムレット』の有名な「尼寺の場」で
ハムレットが恋人オフィーリアに向かって
「以前はおれもおまえを愛していた」と言った直後、
「もともとおまえを愛していなかった」と言います。

一体どちらが本当だろうか? と思いますが、
ハムレットにとっては両方とも本当なんです。
どちらかが本当で、どちらかが嘘ということではない。
シェイクスピアは人間はそういう矛盾したものだという
視点で人間を見つめているわけです。

最近まで世田谷のパブリックシアターでやっていた
『トロイラスとクレシダ』も同じでね。
愛し合っている恋人が、
トロイ戦争で生木を裂くように離ればなれになる。
当時は昼間は戦争をしていても夜になると敵味方同士で
酒を酌み交わすようなことをしていましたから、
トロイラスはある日、クレシダが近くにいることを知る。

会いに行ったところが、
彼女は他のギリシャ人と愛の交換をしていて、
自分があげた愛の贈り物まで渡していたんです。
これを見たトロイラスは言います。
「あれはクレシダであってクレシダではない」
クレシダである、クレシダではない。
この二つが同時に来るんです。
これを僕は「肯定と否定の同時体験」と言っているけれども、
そういう矛盾もまた人間の偽らざる真実なんですね。

人間のやることをすべて善悪で割り切ろうなどと考えていたら、
誤魔化されてしまう。
だけど、人間は所詮矛盾している存在だと思って
物事を見ていけば、矛盾はなくなるんです(笑)。
そのことが分かってから、僕はある意味でシェイクスピアが
怖くなくなりましたね。

彼の作品はハッピーエンドではありません。
四大悲劇などを読むと
「人間というものを、そこまで悪く言ってしまっていいのかな」と
思うことが僕も少なからずありましたが、
矛盾というものに気づき始めてからは、
より作品の魅力に惹かれるようになりました。

結局、人間は少しも変わっていないんですよ。
昔もいまも。シェイクスピアがいつまでも
読み継がれてきた理由の一つはそこにもあるように思います。

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「人間力.com」は月刊誌『致知』より引用しています。

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