慢心せず努力し続ける、それがプロ

慢心せず努力し続ける、それがプロ

長井鞠子(サイマル・インターナショナル専属会議通訳者)

      

(『致知』2014年8月号「一刹那正念場」より)

以前、『源氏物語』の英訳をなさった
オーストラリア人学者の講演があり、
その通訳をしました。
私はそんなに造詣が深くないから、
さっぱり分からないわけですよ。
で、東大の先生と何回もメールのやりとりをしたり、
自分で辞書を引っ張ったりして勉強したんです。

一時間半の講演と三十分の質疑応答でしたけど、
私はその二時間のために、
四日以上かけて準備をしました。

また、単語帳をつくる際は
難しい専門用語を調べて書き出すことはもちろん、
その会議の重要なキーワードについては、
たとえ中学や高校で習うような
簡単な単語であっても書き出しています。

ーー知っている英単語であってもしっかり予習されると。

はい。あと私は英語もそうですけど、
日本語を綺麗に喋りたいんです。
「聞きよく、分かりよく、品よく」、
この三つが通訳をする時に
大事だと思っていて、
そのためにはなるべく大和言葉を使いたいなと。

それで、いま毎月一回、
京都の銀閣寺で開かれている
「和歌講座 にほんの言葉」って教室に通っています。
これは去年から始めたんですが、
冷泉家の先生が和歌を紐解きながら、
大和言葉を教えてくださるんですね。

ーー同時通訳の第一人者となられたいまもなお、
技術を高めるために努力されている。
長井さんを突き動かすものは何ですか。

それは一番いい通訳をしたいということに
終わりがないってことですよ。

私は仕事を終えるたびに、
「もうちょっと違う言い方があったのにな」
という思いを抱くんです。
いまでもパーフェクトな通訳だったと
思ったことは一回もありません。
九十八点かなという日はあるけれども、
百点はないですよ。
絶対どこかに何か改善の余地があるんですね。
  
ーーああ、百点はないと。

やっぱり慢心したら終わりだと思います。
手綱は緩めない。
これで自分は極めたな、
トップに立ったなと思ったら、それで終わりです。
そういう人はプロではありません。
プロは常に常に努力し続けている。

とりわけ同時通訳では
「あっ、いまの訳は違います」なんて撤回はできない。
一度声に出したら出っぱなしで
もう絶対に引き戻せないんですよ。
そういった意味で、真剣勝負なんです。
一瞬、一瞬が生きるか、
討ち死にするかの正念場なんです。
ですから、一刹那正念場というのは
まさに同時通訳の仕事そのものだなと思います。

私はこの仕事がすごく好きだし、やっぱり極めたい。
極められないと思っているんですけど、
でも諦めちゃつまらないですから、
これからも百点を目指して
一生涯現役を貫きたいですね。

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「人間力.com」は月刊誌『致知』より引用しています。

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