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子供たちの命が教えてくれたこと

香葉村真由美(福岡市小学校教諭)

      

(『致知』2011年5月号「新たな地平を拓く」より)

この年、受け持った一人にシュウがいます。
シュウは一年生から四年生まで辛いいじめに遭い、
五年生になると急に攻撃的になりました。
クラスメイトを叩く、殴る、暴言を浴びせかける……。
その行為は次第にエスカレートしていきました。

六年生になったシュウのイライラが募り始めたのは五月、
体育会の練習が始まった頃からでした。
リレーで抜かれるだけで怒って砂を投げたりするのです。
みんなは「シュウを何とかしてください」と訴えます。
私も何度も話したり、怒ったり、褒めたり、
考えられる限りのあらゆる手を尽くしましたが駄目でした。
逆に蹴られ、唾や砂をかけて反抗されるばかりでした。

自宅に帰り、洋服の砂を払い落としながら、
それまで抑えていた涙が溢れました。
悔しくて、情けなくて
大声で泣いた日のことをいまも覚えています。

その次の日、シュウは学校を休んでいました。
私はみんなに「ごめんなさい」と謝りました。
「先生はシュウもこの教室から卒業させてあげたかったけど、
先生一人ではどうすることもできない。
でも、先生は諦めきれない。
人を信じること、人を好きになることを、
どうかみんなでシュウに教えてあげてほしい。
そのかわり先生はみんなを全力で守るから……」

私のその声にみんなは「先生やろう。
シュウがいたからこんないいクラスになったと言えるように、
一緒に頑張ろうよ」と答えてくれました。

子供たちは大きく変わりました。
皆がシュウの行動を受け入れてくれるようになったのです。
叩かれてもジッと我慢し、叩こうとするシュウに
「怒っているんだね。でも人を叩いたらいかん」と
毅然と言い放つ子も出てきました。
その姿を見て私も命を懸けて
シュウにぶつかることを決意したのです。

ある時、シュウは私に、
なぜ自分がこんな態度をするようになったか分かるか、
と質問してきたことがあります。
「分からない。何があったの」

沈黙の後、彼は言いました。
「俺は、俺は、ただ友達が欲しかっただけなんだ!」

そう言うと爪で床を引っかき大声で泣き始めたのです。
私はそんなシュウが愛おしくて、
いつまでもジッと抱きしめていました。
シュウが笑顔を見せ、
みんなに心を開くようになったのは、それからです。

私はどんな子にも素晴らしい可能性があることを知っています。
教師に大切なのは、
可能性をどこまで信じ切れるかです。
信じ切っていれば
子供たちは絶対に裏切ることはないのです。

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「人間力.com」は月刊誌『致知』より引用しています。

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