強さの秘訣は「言語技術」にあり

強さの秘訣は「言語技術」にあり

田嶋幸三(日本サッカー協会副会長)

      

(『致知』2012年9月号「本質を見抜く」より)

記者 長年、日本サッカー協会で代表の強化や若手の育成に
   力を注がれてきましたが、強くなるには体を鍛え、
   技術を磨くだけではダメだと言ってこられました。

田嶋 もちろん身体能力とか技術の高さはベースに必要ですが、
   そういったものはあるレベルに達するとそう変わらなくなってきます。
   その時、何が大切かというと、
   いかに考えてプレーをするかということなんです。
 
   サッカーは正解のないスポーツです。好きに動いていいんです。
   ボールを受けたらドリブルしてもいいしパスしてもいい。
   どこにどう蹴るか、すべて自分で判断する。
   
   そして、それはボールを持っている時だけの判断ではありません。
   自分がボールを持っているのは
   九十分の試合時間の中でせいぜい二、三分です。
   ボールを持っていない時のほうが圧倒的に長く、
   そこでどう動くかということを、
   一試合に何千回、何万回と判断しているんです。
  
記者 ピッチの上で漫然とボールを追いかけ、蹴るだけではダメだと。

田嶋 そうです。状況を見て、自分の考えを組み立て、
   判断してプレーすることが大切なのです。
 
   私自身、選手時代も含めて四十年以上
   サッカーに携わってきました。
   選手を引退してからはなんとか日本のサッカーを
   世界レベルにしたいという思いでやってきたのですが、
   ある時、その方法が見えてきたように感じました。
   それを一言でいえば
   「自分で判断してプレーする」ということであり、
   その秘訣は言語技術にあるのではないかと思ったのです。

   (中略)

記者 そのために具体的にどんな手を打たれたのでしょうか?

田嶋 子供たちの教育ということで言えば、
   二〇〇六年に「JFAアカデミー福島」を開校しました。
   中学、高校の六年間を公立の学校に行きながら
   寮生活でサッカーのエリート教育を受けるんです。
 
   ここではサッカーの訓練だけでなく、
   マナー講習や英会話、
   もちろんディベートや言語技術なども学びます。
 
   例えば言語技術の授業では、
   ある物語を先生が朗読して、
   耳から聞いた物語を生徒たちは要約して文章にする。
   あるいは一つの絵を見てみんなで分析する。
   絵はデパートの中、
   「季節はいつでしょう?」
   「半袖のブラウスが並んでいるので春です」
   「なぜ春ですか」
   「デパートは季節を先取りして品物を並べるからです」
   といった問答ゲームをします。

   そうして論理的な考え方や
   それを言葉にすることを身につけていくのです。

記者 その成果はすぐに出るものでしょうか?

田嶋 コーチや監督のライセンスを取るための
   カリキュラムにも入っていますが、
   子供のほうが早く変わりますね。
   よく言えば論理的になる、悪く言えば生意気にも見える(笑)。

  「なぜならば」とか「どうしてですか」なんて言うから
   いちいちうるさいなって(笑)。
   でも、中田英寿だって、本田圭佑にしたって
   生意気だなって思われていたりするじゃないですか。
   海外で活躍するにはそうじゃないと通用しないという面もあるんです。
 
   二〇〇二年頃から多くの日本人選手が
   海外のクラブチームにチャレンジしましたが、
   現在のようにゲームに出て活躍することができませんでした。
   私は日本人が所属する海外のチームに行って
   「どうですか、日本人選手は?」と聞いて歩いたんです。
   すると「もっと言葉を勉強させてください」という声が圧倒的に多かった。
 
   ところがね、稀に
  「あいつはどう考えても言葉が話せないはずなのに、
   何も言われなかったな」という選手がいるんです。

記者 どうしてでしょう?

田嶋 流暢に言葉を話せる必要はないんだなと。
   大事なのは、自分はこうしたい、
   だからこんなパスが欲しいと、
   自分の考えを伝えることができるかどうかなんです。
 
   例えば、日本では私が家に電話して子供が電話に出る。
  「ママは?」と言えば黙って替わってくれるでしょう。
   それが「察する」という、一つの日本文化です。
   しかし欧米は言語自体が「ママは?」ではなく、
  「ママに替わってください」と言わなければ
   意思が通じないようになっている。
 
   海外に行ったら、察してもらうことを
   前提とした会話では
   とてもコミュニケーションは取れません。

   それはサッカーだけでなく、
   世界で仕事をするためにも必要なことだと思います。

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「人間力.com」は月刊誌『致知』より引用しています。

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