若者よ、君たちが生きる今日という日は、死んだ戦友たちが生きたかった未来だ②

若者よ、君たちが生きる今日という日は、死んだ戦友たちが生きたかった未来だ②

八杉康夫(戦艦大和語り部)

      

『致知』2006年7月号「人学ばざれば道を知らず」より)

 

昭和60年のことです。
 いつもピアノの発表会などでお会いしていた女性から喫茶店に呼び出されました。
 彼女は辺見さんが書かれた『男たちの大和』を取り出し、こう言ったのです。
「八杉さん、実は川崎勝己は私の父です」
 驚いたなんていうものじゃありません。
 戦後、何とかしてお墓参りをしたいと思い、
 厚生省など方々に問い合わせても何の手がかりもなかったのに、
 前から知っていたこの人が高射長のお嬢さんだったなんて……。

 念願叶って佐賀にある高射長の墓前に
 手を合わせることができましたが、
 墓石には「享年31歳」とあり、驚きました。
 もっとずっと年上の人だと思い込んでいたからです。
 その時私は50歳を超えていましたが、
 自分が31歳だった時を思い返すと
 ただただ恥ずかしい思いがしました。
 そして、不思議なことに、それまでの晴天が
 急に曇天となったかと思うと、
 突然の雷雨となり、
 まるで「17歳のあの日」が巡ってきたかのようでした。
 
 天皇も国家も関係ない、自分の愛する福山を、
 そして日本を守ろうと憧れの戦艦大和へ乗った感動。
 不沈戦艦といわれた大和の沈没、原爆投下によって被爆者になる、
 そして、敗戦。
 
 そのすべてが17歳の時に一気に起こったのです。
 17歳といえば、いまの高校2年生にあたります。

 最近は学校関係へ講演に行く機会もありますが、
 現在の学生の姿を見ると、
 明らかに戦後の教育が間違ったと思わざるを得ません。
 いや、生徒たちだけではない。
 間違った教育を受けた人が先生となり、
 親となって、地域社会を動かしているのです。 
 その元凶は昭和史を学ばないことにあるような気がしてなりません。
 自分の両親、祖父母、曾祖父母が
 どれほどの激動の時代を生きてきたかを知らず、
 いくら石器時代を学んだところで、真の日本人にはなれるはずがない。
 現に「日本に誇りを持っていますか」と聞くと、
 学校の先生ですら「持ってどうするんですか?」と
 真顔で聞き返すのですから。
 
 よく「日本は平和ボケ」などと言われますが、
 毎日のように親と子が殺し合うこの日本のどこが平和ですか?
 確かに昔も殺しはありました。
 しかし、「殺してみたかった」などと、
 意味もなく殺すことは考えられませんでした。 
 真の平和とは、歴史から学び、つくり上げていくほかありません。
 鶴を折ったり、徒党を組んでデモをすれば
 天から降ってくるものではないのです。
 しかし、1流の国立大学の大学院生ですら、
 「昭和史は教えてもらっていないので分かりません」
 と平気で言います。
 ならば自分で学べと私は言いたい。
 自分で学び、考えることなしに、
 自分の生きる意味が分かるはずがないのです。

 人として生きたなら、その証を残さなければなりません。
 大きくなくてもいいのです。
 小さくても、精一杯生きた証を残してほしい。
 戦友たちは若くして戦艦大和と運命をともにしましたが、
 いまなお未来へ生きる我々に大きな示唆を与え続けています。
 復員後、長く私の中に渦巻いていた
「生き残ってしまった」という罪悪感。
 それはいま使命感へと変わりました。
 私の一生は私だけの人生ではなく、
 生きたくても生きられなかった戦友たちの人生でもあるのです。
 うかうかと老年を過ごし、死んでいくわけにはいきません。
 未来の日本を託す若者たちが歴史を学び、
 真の日本人になってくれるよう私は大和の真実を語り続け、
 いつか再び戦友たちに会った時、
「俺も生かされた人生でこれだけ頑張った」と胸を張りたいと思います。

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「人間力.com」は月刊誌『致知』より引用しています。

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