生きるために私は食べない

生きるために私は食べない

森 美智代
(森鍼灸医院院長)

 

(『致知』2012月8月号 より)

 
 「生きることは食べること」
 という言葉を聞いたことがあります。
人間は食べ物から栄養を摂り、
エネルギーを得ている。
だから人は食べないと生きていけないと。

 しかし、私は十七年前から食べることをやめました。
いまは一日一杯の自家製青汁を飲むだけの生活です。
それでも私は生きています。
いや、だからこそいまも生きていられるのです。

 体に異変を感じたのは、
短大を卒業して大阪府の養護教諭になってから半年
くらい経った頃でした。「なんか最近よく転ぶなぁ」と
思っていましたが、
そのうち地面が急に上がったり下がったり感じるようになり、
数歩歩けば転ぶ状態に。仕事は続けられなくなりました。

 大阪の名だたる病院をいくつも訪ね、検査を重ねた結果、
「小脳脊髄変性症」であることが分かりました。
十万人に五~十人の割合で発病するこの病は、
現在もはっきりとした治療法が見つからない難病です。

病名さえ突き止めれば治る方法があるだろうと思っていた私は、
小脳が溶けてなくなること、
そしてこれまでこの病を完治した人がいないことを
聞いて絶望的な気持ちになりました。

 その時、私はある人のことを思い出しました。
断食と生菜食を中心にした治療法によって
数々の難病患者を蘇らせてきた甲田光雄先生の存在です。
 私は高校生の時、
叔母に誘われ先生の健康合宿に参加した経験がありました。

人は食べなければ死ぬと思っていた私は、
断食と少食によって難病が治るという
甲田先生のお話に目から鱗が落ちる思いがしました。
「よし、あの先生のところに行ってみよう」
 甲田医院を訪ね、大学病院での診察結果を伝えると、
先生は私のお腹を診ています。

「私は小脳の病気なんだけど」と不思議に思っていると、
「宿便がいっぱいたまっていますね」と。
そして「断食と少食でよくなります」と言ってくれました。

 治らないという西洋医学のお医者さんより、
よくなると言ってくれる甲田先生についていこう。
そして、私が小脳脊髄変性症の完治者第一号になろう。
そういう希望が生まれました。

 甲田療法は食事療法と毛管運動や背腹運動などの
体操を組み合わせて行います。私の場合、ひどい時は這って
しかトイレにも行けない状態でしたので、
体操は調子のいい時だけで、メインは食事療法です。

朝食を抜き、食べる量を減らして少食にしながら、
こまめに断食を実践していきました。
 確かに、断食直後は状態がよくなります。
宿便がなくなることで腸内環境がよくなり、
体内の免疫力が上がるからでしょう。

しかし、復食するとまた小脳が小さくなって
歩けなくなる。
その繰り返しでした。
 そこで甲田先生の指導を受けてから
五年目に半年間甲田医院に入院し、
二十四日間の長期断食を行いました。

 もともと陰性体質だった私には
いきなりの長期断食は逆効果であり、
五年の歳月をかけて少しずつ体質を変え、
その総仕上げの意味での長期断食でした。

 二十日目を迎えた時、体がダルく感じ、
その晩、不思議な夢を見ました。
横になっている私の隣に甲田先生が座って見守っています。
私の体は次第に宙に浮いてどんどん上がっていくのです。
まるで天に召されていくような夢でしたが、
おそらくこの日、私の細胞は生まれ変わったのだと思います。

 二十日の断食という一種の飢餓状態に置かれ、
私の魂が「生きたい!」と強く願ったのだと思います。
そこで眠っていた遺伝子のスイッチが「生きるぞー」と目覚め、
腸内細菌も、基礎代謝も、免疫力も変わって、
体質が変わったのでしょう。

 以来、「小脳脊髄変性症」の症状は出ていません。
その後、再発防止のために生菜食の一環として
自家製青汁をつくり、一日それ一杯で過ごしています。
 また、鍼灸師としての資格を取り、
甲田医院の近くに開業して、先生がお亡くなりになるまで師事。

死後、先生はいつも私の背中にいて色々な
メッセージをくださいます。
それに従っているうちに私自身が講演会に呼ばれたり、
本や映画ができたり、各方面で思わぬご縁が広がっていっています。

 甲田先生は「少食が世界を救う」と信じていました。
いま、豊かな国ではほとんどが
食べ過ぎて病気になっています。
一方、貧しい国では飢餓で亡くなる方がたくさんいる。

 天国というのは皆が大きなお鍋を囲みながら、
長い匙を使ってお互いが食べさせ合っているといいます。
一方、地獄は長い匙を使って「自分に、自分に」と
食べ物を運ぼうとするから、
結局こぼしてしまって一口も食べられずにお腹を空かせている。

生きながら天国に行くには自分だけが満腹になろうとせず、
それぞれが少し食べることを我慢し分け合えばいいのです。
 また、少食で生菜食を中心にすれば調理の燃料もいらないし、
体が強くなり、
寒暖に適応できるようになって
冷暖房もほとんどいらなくなります。

いま世界が直面している温暖化問題やエネルギー問題、
食糧問題なども解決できます。
 ボロボロの白衣を着て、薬を出さず、
外来の診療代が三百円程度だった甲田先生は、
自分のことを勘定に入れず、ひたすら人々の健康を考え、
断食と少食を広めてこられました。

先生から救われた一人として私もその思いを受け継いで、
少食によって世界を変える一助になりたいと思います。

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「人間力.com」は月刊誌『致知』より引用しています。

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