成長の種はコミュニケーション

成長の種はコミュニケーション

石渡美奈(ホッピービバレッジ取締役副社長)

 

『致知』2007年11月号より

東京赤坂で祖父がラムネの製造を始め、
第二次世界大戦後に「ホッピー」が誕生したのが
昭和二十三年のこと。

以来、祖父、父と受け継がれてきた
ホッピービバレッジの三代目となるべく、
全国を東奔西走する毎日を送っています。

ホッピーは、麦芽を使った低アルコール飲料として、
サラリーマンを中心に多くの方々に親しまれてきました。

現在私は副社長として雑誌やラジオなどに出演させていただいたり、
インターネットで日記を公開したりして、
ホッピーを広くご紹介しています。

おかげさまで平成十四年に八億円弱だった年商を、
五年間で三倍の約二十三億円まで伸ばすことができました。

ホッピーに入社するまで、私はいわゆるのん気なお嬢様でした。
一人娘で経済的に恵まれた環境に育ち、
大学卒業後、結婚までの腰掛けのつもりで大手企業に入社。

三年後に無事寿退社しますが、
「ホッピーの跡取りを見つけるため」という動機での
結婚はうまくいくはずもなく、半年で離婚。
その時初めて、自分の人生について真剣に考えました。

これからどう生きていこうかと暗中模索し、
最後にたどり着いたのがホッピーでした。

反対する父を一年がかりで説得し、
いざ入社してみると思いがけない試練の連続でした。

入社当時、社内は派閥争いで真っ二つに分かれていました。
社員の意識はバラバラでやる気が感じられません。

後輩に仕事をとられることを恐れた上司が部下に仕事を教えず、
いつまでたっても若手が育ちませんでした。
さらに赤坂にある本社と調布の製造工場とは交流がほとんどなく、
組織全体に情報が行き届かず、
血が通っていないという壊死寸前の状態です。

希望と期待をもって入社したものの、
旧態依然とした社内で思うように動けない鬱憤から、
私は次第に青年会議所の活動に没頭していきました。

平成十五年の取締役副社長就任時、
父である社長から実質の経営を任されました。
実践的経営セミナーで定評のある小山昇氏に
出会ったのはそんな時です。

たまたま出かけた講演会で小山さんの話を聞き、
「この人だ」とすぐにぴんときました。
繰り返し勉強会に参加し、社内改革のために
その教えを会社に取り入れていきました。

早朝勉強会を始めたり、ボイスメールという
新しい手段を使って社内の連絡を密にしたりと
様々なことを試してきましたが、
一向に効果は上がりません。

後で気づいたのですが、十分な説明もないまま
小山さんからの教えを急進的に取り入れたことで
社員たちは動揺し、次第に社内の雰囲気は
険悪になっていったのです。

「大事な話があります」

嫌な予感は的中しました。
神妙な面持ちでやってきた工場長と社員二人の胸ポケットには、
「辞表」と書かれた白い封筒が入っていました。
聞けば、工場で働く社員全員が辞意を表しているといいます。

私は頭の中が真っ白になりました。

すがるような思いで小山さんに連絡すると、
すぐに駆けつけてくださり、
工場長に向かってこう切り出されました。

「工場長、この子がいきなり始めたことについていけず、
 反旗を翻したあなたが正しい」
 
 
私はこの言葉に耳を疑いました。

さらに小山さんは父に

「社長、この子はまだひよっ子だから、
 手は離してもいいけど目は離さないでください。
 でも一番悪いのはこの子に様々なことを教えた
 この私なんです」
 
 
と言葉を続けられました。
工場長、社長、そして私の三者の立場を汲んだ
判断をしてくださったのです。

その瞬間、工場長は涙を流して

「本当は協力したい。
 ただもっと話してほしいだけなんです」
 

と本音を打ち明け、社長は安堵し、私は救われました。

経営とは人の心理を無視してやってはいけない、
何より社員とのコミュニケーションが大切なんだと
目が覚めました。

それぞれの立場の人間の気持ちを大切にしながら、
一つひとつ問題を解決していく。
いきなり多くを変えようとするのではなく、
焦らず小さな一歩一歩を積み重ねることで、
いつか大きな実を結ぶのだと気づいたのです。

コミュニケーションの大切さを身をもって実感した私は、
経営者と幹部が同じ価値観を持って
一つの目標に向かうため、幹部とともに
小山さんの実践塾に参加しました。

塾では「企業発展の原点は環境整備にある」という教えのもと、
全社あげての調布工場のトイレ掃除や廃棄物処理などを行いました。
すると不思議なことに、回を重ねるごとに
いままでにはない連帯感や濃密なコミュニケーションが生まれ、
仲間意識が芽生えたのです。

また、社員の誕生日にはおめでとうを伝えたり、
小さな貢献に気がつくと、そのたびに感謝の気持ちを
自筆の葉書で表すようにしています。

それを手渡しではなく自宅に送ることによって、
経営者から高く評価されていることを家族が理解し、
家族間のコミュニケーションの手助けにもなるのです。

いまでも業務の合間を縫ってコツコツと
月に五十通以上送っています。

それからというもの

「ミーナさんからの葉書が励みになって頑張れました」

などの声を聞くことができ、私の元気の源にもなっています。

平成二十二年、わが社は創業百周年を迎えます。
これからもお客様に安心して飲んでいただける
ホッピーを提供し続けるため、
誰にでもできることを積み重ねて、
小さくてもきらっと光るような会社にしていきたいと思っています。

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「人間力.com」は月刊誌『致知』より引用しています。

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