世界の一パーセントになる方法

世界の一パーセントになる方法

牧野克彦(ウィッシュ・アップ社長)

  

(『致知』2010年12月号「致知随想」より)

生命保険業界にいる人間の一つの大目標に
「MDRT入会基準達成」があります。
全世界の保険営業マンの、
毎年年間トップ一パーセントの成績を達成した者だけが
入会できるこの基準を、私は十四年間達成してきました。

現在は現役保険営業マンである一方、
営業研修の会社を設立、指導のために
全国を駆け回っていますが、
そんな私にもまったく電話ができない、
「営業恐怖症」の時期がありました。

車のディーラーから保険の世界に飛び込んだのは
三十五歳の時でした。幸い、知人や前職でのお客様など
アプローチ先が多かったので、入社六か月間で
百八人のお客様からご契約いただくことができました。
これは同期入社でもトップクラスです。

しかし、次第に私は焦燥感に駆られ始めました。
実はこの数字の陰には何倍もの「NO」があったのです。

「久しぶりに電話をしてきて営業の話?」
「車ではお世話になったけれど、生命保険はいいよ」
「保険はたくさん入っているから」……。

お客様からの「NO」の返事は、
私の中で薄皮のように重なって、
半年ほどした時、ついに臨界点を越えてしまいました。

家族に心配をかけたくないとの思いから、
毎日元気よく家を出るものの訪問先はありません。
喫茶店やパチンコ屋、お金のない時は河原で過ごしました。
眠れない夜が続き、思い悩んだ末に頭に浮かんだのは、
前職で面識のあった心理カウンセラーの先生でした。
相談に行ってみると、先生は黙って私の話を聞き、
時々ポロッと質問を投げかける。
そうやって私の心の奥底の声を引き出してくれました。

その繰り返しの中で気がついたのは、
やっぱり自分はこの世界で成功したいのだ、
ということ。

もう一つは、すでに契約していただいた
お客様に対して責任を持たなければ、
ということでした。

そうしてじっくり自分の言動を振り返ってみると、
私は新しく飛び込んだ世界で
早く成果をあげたい一心で、
かなり強引にアポイントを取りにいっていたのです。

よし、もう一度心を入れ替えて頑張ってみよう。
そして、今度は保険を売り込むのではなく、
自分がお客様にできることを率直にお伝えしてみよう。

「一度お断りされた牧野です。
 あれから三つ勉強したことがあります。
 そのお話を聞いてもらえますか?」

とお電話してみると、三割くらいの方は
「聞いてみてもいいよ」とおっしゃってくださいました。

面談の時も、お客様がいま保険に対して
感じていることをお聞きして、

「その問題なら私は解決のお手伝いができます。
 私の考える解決方法を聞いていただけますか?」
 

と質問すると「聞くよ」。
ご説明して、「ご契約されますか?」とお聞きすると
「する」とおっしゃるのです。

「いまはいい」
「また今度にするわ」

とおっしゃるお客様もたくさんいました。

最初は「お断り文句」と受け止めていましたが、
よく考えればお客様は「時期」のことを言っているだけで、
商品そのものを必要ないと言っているわけではないのです。

この一、二か月間で刈り取ろうとするから
「お断り」になるのであって、
生涯この仕事を続けていくのであれば、
その人は間違いなく「見込み客」です。

一度断られた相手にも、
メールやお手紙で情報を送り続けていると、
次に保険を見直す時、真っ先に
声を掛けていただけるようになりました。

このように自分の中で
「断られない営業法」を確立した私は、
再びトップセールスに返り咲き、
一年目からMDRT基準を達成することができました。

そして十四年過ぎて思うのは、
MDRTに入会するのに
才能は必要ないということです。

大切なのは「自分はMDRTメンバーになる」
と決めること。覚悟を定めて行動し続ければいいのです。

高い目標を掲げれば、当然困難はつきものです。
決めていない人は、困難にぶつかると
「やっぱりね。自分には無理だったんだ」と
安心して諦めます。

決めている人は
「この壁を越えたら目標に一歩近づける」と
自ら心を奮い立たせ、諦めません。

「この人、営業として大丈夫かな」と
思うほど説明下手だった人が、
誰にも負けない努力を続けた結果、
ある時グーンと成長し、
MDRTメンバーになった
ケースをたくさん知っています。

そしてもう一つ、大切な資質は
「知恵を出す」ことです。
努力は確かに大事です。
しかし、そこに知恵が伴っていなければ
結果には結びつきません。

例えば、大好きな女性を振り向かせたいと、
朝から晩まで「大好き、大好き」と追い掛け回したら、
本人には「懸命なる努力」でも
相手には迷惑以外の何物でもありません。

知恵とは、相手を思いやる気持ちです。
どうアプローチをすれば
お客様は振り向いてくれるか、
その心を感じ取り、慮れない人は
結果を出すことはできません。

いま、営業指導をする中で、
多くの営業マンが悩んでいることを感じます。

しかし、そのほとんどの原因は
「自分のわがまま」です。
お客様(=成績)を自分の望む通りにしたい。

しかしそうならない現実とのギャップに
苦しんでいるのです。
「わがまま」を取り除き、
お客様の望むことをして差し上げれば、
必ず結果はついてきます。

決める。
諦めない。
そして知恵を出す。

そうすれば世界の一パーセント層である
MDRTメンバーになることはもちろん、
どんな仕事でも必ず結果を出せるのではないかと思っています。

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「人間力.com」は月刊誌『致知』より引用しています。

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